Tiger Technology社のTiger Bridgeはバックアップソフトウェアの一種で、バックアップやリストア、バージョン管理等の機能をシステムに提供します。ただし、通常のバックアップソフトウェアと異なる以下のような特徴を持ちます。
- 他のバックアップソフトウェアと同様にTiger Bridgeはソースストレージ1のデータをターゲットストレージ2に対してバックアップのための複製を行うことができます。
- 通常のデータ複製に加えてTiger Bridgeは複製後の当該ストレージスペースをスタブファイル3に置き換えストレージスペースを再利用(Reclaim)することができるようになります。
- 通常Windows対応アプリケーションからオブジェクトストレージに対して直接アクセスすることはできません。Windows対応アプリケーションがアクセス可能なストレージとクラウドオブジェクトストレージの間をブリッジする機能をTiger Bridgeは提供します。
- クラウドオブジェクトストレージが提供するData Archivingに対応します。ホット/クール層とアーカイブ層を備えるストレージサービスに対応しておりホット/クール層からアーカイブ層への自動、手動のデータ移動を可能にします。
- Tiger Bridge を実行している異なるコンピュータ上にある複数のソースストレージのコンテンツを、共通のターゲットストレージを通じて自動的に同期します。
- クラウドオブジェクトストレージが持つバージョン管理と連携する機能を提供します。
- 誤ってソースストレージ上のファイルを削除した場合でも、期限を区切ってターゲットストレージ上に当該ファイルを保持するSoft Delete機能を提供します。
- Tiger Bridge機能へのアクセスおよびクラウドターゲットへのアクセスに関して適切なデータ保護の機能を提供します。
- ソースとターゲットストレージのペアリングを自由に設定でき、全ペアリング、もしくは個別のペアリングごとに運用のポリシーを設定することができ、様々な自動処理を提供します。
Tiger Bridgeとクラウドオブジェクトストレージの相性
上記の特徴のとおり、他のバックアップソフトウェアと大きく異なる点はクラウドオブジェクトストレージとの密な連携が可能なことです。
その一つとして、クラウドオブジェクトストレージが用意する様々なストレージクラス、または、ストレージ層4を積極的に選択し、特定の運用に適用できます。この適用により、特定の運用条件におけるストレージコストの低減を可能にします。下図はストレージクラスの選択画面の一部です。
また、ソースストレージとターゲットストレージのペアリングごとに使用するクラウドオブジェクトストレージを自由に選択することが可能です。あるソースストレージにはAmazon S3をターゲットストレージに、また、他の異なるソースストレージにはAzure Blob Storageをターゲットストレージに割り当てるといった組み合わせも可能です。
下図は3つのソースストレージごとに異なるターゲットストレージを設定した例です。
一つ目のソース「C:¥work¥source01」にはWasabiオブジェクトストレージを「C:¥work¥source02」にはAmazon S3を「C:¥work¥source03」にはローカルディスクを割り当てています。
Tiger Bridgeのペアリング
Tiger Bridgeはソースストレージとターゲットストレージの1つ以上のペアリングを自由に定義することができます。複数のペアリング全体、もしくは、ペアリングごとに複製、再利用等のポリシーを定義でき、それぞれのソースとターゲットのペアリングは定義されたポリシーに従ってTiger Bridgeは自動的に処理を実行します。
Tiger Bridgeのポリシー
ソースとターゲットのペアリングに対して個別に又は全体(Global)にポリシーを設定することができます。ポリシーには複製(Replication)、スペースの再利用(Reclaim space)、Archive、Soft Delete、Versioningの5つがあります。これらのポリシーを設定することにより、様々なTiger Bridgeは柔軟な自動処理を提供します。
Tiger Bridgeが関連するペアリングすべて(Global)に対してか、ペアリングごとに異なるポリシーを設定することができます。下図の例ではGlobalのポリシーとして Replication Policy (1 Weeks/s)を設定しており、ソースストレージ「C:¥work¥source02」にはReplication Policy, Reclaim space policy, Archive Policyを「C:¥work¥source03」にはReplication PolicyとReclaim space Policyを定義しています。
続いての項目では主要なポリシーについて説明します。
データの複製 -Replication Policy-
機能:Tiger Bridgeの動作の基本であり、ソースストレージ上で条件に一致したデータをターゲットストレージに複製します。
ポリシーオプション Replicate files after: ここに設定した時間、ファイルの更新がない場合複製をします。
基本となるポリシーなのでTiger BridgeをインストールするとデフォルトでGlobal Replication Policyが設定されています。
スペースの再利用 -Reclaim Space Policy-
機能:複製済みのファイルをスタブファイルに置き換えてソースストレージ上の領域を解放し、再利用可能な状態にします。(以下この処理をスタブ化と呼びます)
ポリシーオプション
- Enable:この機能を有効にします
- Remove file not accessed for more than:ここに設定した期間以上アクセスがない場合はスタブ化します。
- and bigger than:ここに設定したサイズ以上のファイルをスタブ化します。すべてのファイルをスタブ化する場合は0bytesにします。
- Start reclaiming space when used space exceeds:使用済みスペースがこのパーセンテージを超えるとスタブ化します。使用されているスペースに関係なくスタブ化する場合はこの値を0%にします。
- “Ignore access time criteria if used space exceeds: この値を超過した場合は「Remove file not accessed for more than:」に設定した期間の前であってもスタブ化します。
下図はスタブ化の様子を示したものです。スタブファイルはディスク上のサイズが0Byteであり、このファイルが使用しているはずのストレージスペースを再利用(Reclaim Space)することができます。
またスタブ化されたソースストレージ上のファイルに対してアプリケーションからアクセスがあった場合は、自動的にターゲットストレージから当該ファイルをダウンロードします。下図はその様子を示しています。この仕組みを持つので、ターゲットストレージにバックアップを保存したとしても必要なタイミングで自動的に短時間で必要な情報をローカルにあったかのような感じでアクセスすることができます。
Archival Tierを活用 -Archive Policy-
機能:クラウドストレージサービスが用意する廉価なアーカイブ用ストレージにファイルを保存する機能を使用するためのポリシーです。
ポリシーオプション
- Archive files not accessed for more than:ここに設定した期間以上アクセスがない場合にファイルをArchive Tierに移動します。
- and bigger than:ここに設定したサイズ以上のファイルをArchive Tierに移動します。すべてのファイルをスタブ化する場合は0bytesにします。
AWSのAmazon Simple Storage Service(S3)、MicrosoftのAzure Blob Storage等のクラウドストレージサービスにはデータの取り出しには時間と費用が必要になるが容量料金が廉価なストレージを用意しています。具体的にはAmazon S3の場合は「Glacier Flexible Retrieval」、Azure Blobの場合は「Archive」と呼ばれるサービスがこの種類のストレージサービスになります。(これらのストレージのことをTiger Technology社はArchive Tierと呼びます)
クラウドストレージ上にあるファイルがArchive Policyに設定した条件と一致したファイルを自動的にArchive Tierに移動します。通常の複製でコピーするクラウド上の対象ストレージをTiger Technology社はImmediate Tierと呼びます。Archive PolicyとArchive Tierの関係を下図に示します。
このポリシーを設定することにより、クラウドストレージサービスが提供するArchive Tierに相当する廉価なストレージサービスを積極的に使用することができ、ストレージ費用を低減することが可能になります。
今後の予定
Tiger Technology社はTiger Bridgeは今回紹介した以外に多くの機能を持ち、様々なユースケースに対応することが可能です。今回紹介しきれなかった機能や想定されるユーズケースの紹介も今後このブログで記事にしていく予定です。
- Windows対応アプリケーションがアクセス可能なNTFS/ReFSボリューム、SMB/NFSネットワーク共有、または、ボリューム共有上のフォルダーをソースストレージとして割り当てることが可能です。 ↩︎
- クラウドオブジェクトストレージ、ネットワークで接続された他拠点のデータセンター内のストレージ、同サイト内のファイルサーバーを割り当てることが可能です。 ↩︎
- Tiger Bridgeが生成するソースストレージ上のメタデータのみを残したストレージ上のサイズが0バイトであるファイルです。ソースストレージからターゲットストレージへのコピー後に、コピー済みのファイルからソースストレージ上にスタブファイルを生成し、元のファイルを削除する一連の処理をスタブ化と呼びます。 ↩︎
- オブジェクトストレージのオプションをAmazon S3ではストレージクラス、Azure Blob Storageではストレージ層と呼びます。 ↩︎