クラウド型監視カメラシステム、もしくは、サービスが多く提供されています。クラウド型監視カメラシステムは下図のようにOn-premiseにはカメラ、PoEスイッチ、ルータのみが設置され、映像を扱うVMSはクラウドに置かれたサーバーにて処理され、録画データもサーバー同様クラウドに置かれたストレージに保存されます。
これに比べてOn-Premise Cloud Hybridのシステムの場合は、上記のカメラ、PoEスイッチ、ルータ以外にVMS、Surveillance Bridgeがインストールされたサーバー、Surveillance Bridgeにおけるソースストレージに相当するディスクがOn-Premiseにあり、録画を保存する、もしくは、バックアップを保存するストレージがクラウド上にあります。
監視カメラシステムに使用される回線
それぞれの方式に、メリット、デメリットがありますが、今回は録画データの品質について考察したいと思います。
監視カメラシステムの場合、コストを優先してCloudとの接続には非帯域保証回線等が使われることが多いです。これらの回線はベストエフォート型1と呼ぶ場合もあります。最近は光回線が多く使われ、高速でのデータのやり取りが可能になってきました。しかしながら、回線の品質としては昔と変わらず帯域を保証しないベストエフォート型です。
帯域を保証しない回線を使用していると調子が良いときはデータの欠落や待ちがなく、かつ、高速でカメラのデータはクラウドに送り込まれますが、回線の調子が悪いときは、低速でしかデータが送られなかったり、一時的に回線が切断されることも可能性としてはあります。(ここから以下、「回線の調子が良い、悪い」を「回線の品質が良い、悪い」と表現します。)
ベストエフォート型の回線の品質
ベストエフォート型の回線では、回線増強やメインテナンスのための工事による通信の停止が起こる可能性があります。
この工事の情報は通信会社のHPで公開されています。例えば、NTT東日本の場合「工事・故障情報」で工事の情報を公開しています。
試しに弊社のオフィスがある東京都中央区東日本橋3丁目の2023年10月15日現在の「フレッツ 光ネクスト」のメインテナンス工事をしらべてみると約1か月の間で16回の工事を行う予定が公開されています。
実際にはあらかじめ予定できる工事以外に、不具合、故障による通信の停止もあります。NTT東日本の場合は同様に「工事・故障情報」のページで情報を公開しています。上記と同じ条件で検索してみると2件の障害情報が公開されていました。
On-Premise の装置をバッファとして考える
Full Cloud型のシステムの場合、カメラのデータを回線を通じて、そのままクラウド上のサーバーに送り込まります。従って回線の品質が悪い場合はその影響を受け、品質が悪くなっている期間のクラウド上のストレージに保存される録画映像は乱れたり、途切れたりすることが考えられます。
Full Cloud型のシステムと比較して、On-Premise Cloud Hybrid型のシステムの場合、同じ敷地内のLANでサーバーとカメラが接続され、カメラとサーバーの間は安定してデータの転送が行われます。
カメラから送り込まれたデータはサーバーで処理され、最初にOn-Premiseに設置されたローカルのストレージに保存されます。(Surveillance Bridgeのソースストレージに相当)
On-Premiseのソースストレージに保存されたデータはSurveillance Bridgeによりクラウド上のストレージにコピーされます。
Surveillance BridgeはCloud Storageからの受信確認ができない場合は再送を繰り返します、再送が繰り返され、映像を送り込めない時間が続くことも考えられます。
しかしながら、ソースストレージの容量にある程度のバッファを用意しておけば、映像を送れ込めない時間が続いてもバッファがあふれるまでの間は、確実にソースストレージ上に録画映像は保存されるので、不安定な回線に起因する画像の乱れや欠落は生じません。
まとめ
Cloudを使用する監視カメラシステムにはFull Cloud型とOn-Premise Cloud Hybrid型があることを説明しました。続けて、これらのシステムに使用されるクラウドと接続する回線には廉価ではあるが、サービスの品質を保証しないベストエフォート型が使われることが多いことと、ベストエフォート型回線の工事、故障の頻度を一つの実例を挙げて説明しました。
最後にベストエフォート型の回線を使う場合には、回線の品質の影響を受けにくいOn-Premise Cloud Hybrid型がFull Cloud型に比べて画像の乱れや欠落が起きにくいことを説明しました。
Surveillance Bridgeの開発、販売元であるTiger Surveillance社のマニュアルの中で、このバッファとしてのローカルストレージに対する考え方を説明しています。近い将来この推奨方法をブログにて説明する予定です。ブログの公開までしばらくお待ちください。
- ベストエフォート型とは:
サービスの品質(QoS)の保証がない通信サービスのことを指します。
品質の内容はサービスやネットワークの種類によって異なりますが、最低限保証される通信速度や、メンテナンスや故障による中断時間が最大で1年間にどれくらい発生しうるか、送信したデータが決められた時間以内に相手に届くか、セキュリティーが確保されるか、などがあります。(NTT東日本ホームページより) ↩︎